驚いた...Nスぺ「シミュレーション ~昭和16年夏の敗戦~」を見て

長文です。ごめんなさい。
いやあ驚いた。8/15は終戦記念日なのでNHKスペシャルなどで珠玉の特別番組が放送されます。
今回特筆すべきはNスぺの「シミュレーション ~昭和16年夏の敗戦~」がとにかくすごかった。概要を下記に紹介します。
旧日本軍?当時の日本政府?が主導して、「もしアメリカと戦争したらどうなるか」これをシミュレーションする機関、「総力戦研究所」があったらしいのです。これは史実です。そして番組はドラマ仕立てで描かれておりました。
総力戦研究所のメンバーは各省庁や陸海軍はもとより、日銀やメディア、民間企業から選りすぐりの人材が登用されました。なんと平均年齢は33歳。
その当時の日本の頭脳と思われる人々が極秘に集められ研究して、政府にアドバイスするという立ち位置で、自由な議論を許されたという、特高により言論統制されていた当時としてはかなりレアな組織だったようです。
これから再放送などもあるかもしれませんので細かいネタバレは避けたいのですが...ある程度書かないと伝わらないと感じますのでお許しください。
当時、日本は中国に攻め込んだことから国際的に大バッシングを受けます。そしていわゆる経済制裁。資源が無い国との認識で主に石油などの燃料が供給されなくなりました。しかしながら大陸には無尽蔵な石油がある、とのことから中国大陸からは手を引きくことが出来ず、さらに攻めるという議論が大勢を占めていました。
ただ、軍部にも民間にもインドまで攻めたらアメリカが黙っていない、ということを主張して、戦争を避けるべきという立場の方々もかなりいたらしいのです。
印象に残っているいくつかの場面を記憶で書きます。
戦争肯定派「資源が無い事態、これをどう打開するのだ」
戦争否定派「資源があっても意味が無いんです」
戦争肯定派「何を馬鹿なことを」
戦争否定派「船舶が足りません。戦争になったらさらに輸送船を失い日本へは運べません」
なるほどとは思いますね。このように冷静沈着な判断、研究を続けて総力戦研究所は国会?ではないな。秘密裡に開催された当時の議会の中枢に発表しています。その内容がすごい。あまりにもシミュレーション結果と同じ道をたどり、どうやら東京裁判でも「コントロールしていたのはこの機関か?」と問題になるほどであったようです。
報告内容をざっとまとめると
・日米の国力差は1対20
・戦争末期にソ連の参戦
・昭和16年夏の敗戦
本来はかなり細かく国民の生活や農村人手不足による食糧難など予測していましたが、以上のような内容でかなり正確にシミュレーションしていたようです。
そして答申した結論は「圧倒的な敗北 開戦するべきでない」
しかし、その結果は無視されて真珠湾攻撃に突入。最終的には被爆国となり無条件降伏という最悪の展開となってしまったわけですが、比較的開戦論者として悪いほうに捉えられることが多い東條英機ですが彼が総理大臣時代には開戦しない提案を行っていることが明らかになりました。「弱腰東條」と批判されていたわけですが、こちらは創作も含まれるかと思われますが劇中の東條英樹の以下の発言には驚きました。すみませんが全く同様の発言ではないです。
「開戦は無謀というのはわかっている。避けたいが、すでに日中戦争(太平洋戦争前)で軍人・軍属で約41万人の犠牲、さらに遺族も含めると後戻りできない領域だ。講和条件である占領下すべての放棄は軍部はおろか国民も納得しないだろう。開戦しないで敗北、開戦して敗北、どちらが今後の日本のためになるのか。」
と言う主旨の発言に私は驚きました。物事はそう単純ではないのだなと。いずれにしても太平洋戦争で犠牲になられた方々のご冥福はお祈りいたしますが、この状況はもしかしたらロシア・ウクライナ戦争にも同様な通じる状況はあるのかもしれない、と思った次第です。